うつ病と「死の欲動」:不連続的差異論から解明する

うつ病とは何か。前にも述べたが、これは、連続的同一性の病気だろう。マイナス強度の病気である。連続的同一性化している人間は、受動で、反動で、反射で生きているから、依存するものがなくなると、支えを失って、落ち込むのである。すなわち、マイナス強度が反転して自己内部で否定的なままである。そして、立ち上がるには、自己内の能動性、すなわち、プラス強度を見出して、それを肯定して能動的に生きていく必要がある。だから、うつ病の治癒のためには、当人の「生まれ変わり」が必要なのである。それまでの、否定反動的な生き方から、自発的な生き方が要求されているのである。ここでフロイトが説いた「死の欲動」であるが、それは、マイナス強度のことであることがわかる。それは、反動暴力性であり、それが自己を否定すると同時に、他者をも否定するのである。だから、自発的生き方とは、プラス強度を肯定する生き方である。個としての、特異個、差異としての生き方である。また、敷延するに、精神の病気は、おそらく、このような連続的同一性であるマイナス強度が、プラス強度を抑止している病気ではないかと考えられるのである。