差異と個 その4:個の情報とメディア界的強度様相的前個体性

その3の考察で、個の情報の問題を抜かしてしまった。
 この問題は、進化や遺伝の問題と関係するだろう。というのは、現象界での個の経験・体験が、メディア界に記録・「記憶」されるか否かの問題であるからである。そうならば、その情報が、遺伝されたり、また進化を引き起こすと考えられる。獲得遺伝であり、それによる進化である。生物学的には、DNAの変化ということになるだろう。しかし、ここでは、構造変化が問題である。経験から構造変換が起こるのだろうか。あるいは、構造変容が。
 ここで、メディア界の人間構造から考えよう。通常、連続的現象的個体として生活している。深層構造ましてやイデア界のことなど思いもせずに生活している。しかし、特異な人間がいて、心身実験をするのである。たとえば、スピノザ哲学を実践してみると、確かにその通りだとわかる。能動的観念のもつ強度が理解される。この特異な人間は、そのような変容した人間として社会で生活して、周りに違う「雰囲気」、言葉、態度をもたらす。それは、少しの変化である。しかし、メディア界の賦活されたエネルギーを発していると考えられる。正しく言えば、メディア界の活性化した強度である。これは、私見では、マイナス強度(正確に言えば、マイナス強度を能動的に包摂したプラス強度であろう)の発露であり、創造的強度である。つまり、ここには、メディア界の変化があるということである。すると、これは、理論的には万人に共通することとなろう。
 これはいいとして、では、個の情報はどうなるのか。思考なり、行動なり、生産なり、行う個の情報である。物質体は消滅する。というか、解体する。しかし思うに、個の独自の思考は、おそらく電磁波をもつだろう。思考量子としておこう。この思考量子は波動であるから、物質身体が解体した後も残るだろう。では、残存する思考量子波動はどうなるのか。思うに、これがメディア界の人間構造の強度に関係するのではないだろうか。人間構造の強度の度合があり、これが個体を形成する。この度合が量子波動ではないだろうか。そして、この量子波動が前個体の思考であるということになるだろう。こう考えると、形相の強度様相的永劫回帰Ewige Wiederkehrはあることになる。このように考えると、個とは、メディア界において、前個体、形相の強度様相に変換される。そして、個の経験の質がメディア界に貯蔵されて(参照:仏教の阿頼耶識)、遺伝となったり、進化の形態となったりするだろう。
 あとで、精緻に検討したい。