エンジニアの悩みへのホリエモンの回答:ホリエモン流経営知と不連続

ライブドアは、不連続的差異論のような、差異と差異とが連結した企業のように思えます。これまで、連続的同一性化していた、固定観念の企業に、創造的である新しい差異と差異の連結を取り入れて、新生・活性化させるように思えます。あとで、もう少し、細かく理論化してみたいと思います。

ホリエモンセミナーライブ再録(1) ライブドア堀江貴文社長にぶつけるエンジニアの悩み 「ITベンチャーの成長スピードは速いが、エンジニアは自分のテンポを貫けばいい」
大胆な企業買収で巷の話題を独占している「ホリエモン」ことライブドア堀江貴文社長。もとはといえば、自分でコードも書いたプログラマが彼の原点。組織と人間関係やスキルアップに悩むエンジニアの問いにも真摯に答えてくれた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:05.04.13

2005年3月19日、六本木アカデミーヒルズで開催された「堀江貴文に聞きたいこと大募集!〜本音で語り合う、これからのキャリア〜」(リクナビNEXT『Tech総研』、(株)ライブドアキャリア共催)。白熱のライブセミナーの模様を3回にわたって再現する。

変な一体感よりも、それぞれが自分の方向性をちゃんと持つことの方が大事

イベントには20〜30代のエンジニアなど約200名が集結。スキルアップや職場の人間関係などについて、会場内でダイレクトに来場者に質問を投げかけた。その反応をボタンで即時集計し、来場者に直接質問をしてもらいながら、堀江氏が自分の考えを披露するというスタイル。進行はTech総研編集長の前川孝雄が務めた。

来場者への最初の質問は「あなたの職場に一体感はありますか?」というもの。技術開発をめぐって上司や同僚との間に信頼関係を構築したり、同じ目標に向かって進んでいるという感覚が得られているかどうかは、エンジニアの働きがいに大きな影響を与えるはず。会場では47名(約23%)がYESと答えた。しかし、堀江氏は「一体感」という言葉に引っかかったようだ。
堀江 : 終身雇用、年功序列型の従来型の会社は、そりゃ一体感があったほうがいいかもしれないけれど、これから伸びる新しい会社では、あんまり必要ないんじゃないですかねえ。下手に一体感があったりすると、逆に怖いような気がします。ライブドアも、いろんな人たちがいて、いろんな方向を向きながら、勝手にやっているという雰囲気があります。私が言っている方向性でたまにおかしいことがあると、それを牽制する動きも起こる。全員が同じ考えという意味での一体感よりは、バラバラでありながらバランスも取れるというほうが、会社の成長にはいいんじゃないかと思うんです。「一体感がない」ことがあたかも悪いことのように捉えられているけれど、 そんなことはないと思うな。


前川 : でも、仕事や技術に対するお互いの信頼感がないとやりづらいと思いますが。

堀江 : 職場の中のキーマンと信頼関係を持つ必要があるというのはその通りですけど、なにも職場の全員と仲良くする必要なんかないですよ。僕が従業員という立場で働いたのはアルバイト時代だけですが、そのときも誘われても社員旅行なんかにはいかない、チョー扱いづらいアルバイトでしたから(笑)。

ついてくる社員は必ずいる。でも、全員にスピードを強制したら組織は疲れてしまいます

わずか5人の社員からスタートしたライブドア。その急成長ぶりはITベンチャーのシンボルのように語られる。ライブドアでは全員が堀江氏と同じようなスピードで働いているのだろうか。会場からは、「会社が急に大きくなると、そのスピードに付いていけない社員も出てくるのでは」という質問があがった。

ライブドア堀江貴文社長 Tech総研編集長 前川孝雄


堀江 : いや。無理矢理でも付いてこれる社員が必ず出てきます。その人たちがリーダーになっていくんです。けれども、全員が同じスピードで成長するわけではない。 2000年以前から働いている社員は少なくなりましたが、中にはマネージャとして30〜40人の部下を率いている人もいれば、部下もいなくて一人で黙々と自分の技術を担当している人もいます。そうかと思うと、買収した企業にいた営業の人で、ライブドア入社後急速に力を伸ばして、いま執行役員の一人になっている人もいます。

 僕は全員に同じスピードでの成長を求めたりはしないんです。個々のスキルをちゃんとみないで、無理矢理成長させようとすると軋みが生じてしまいます。会社にとってもそれはよくない。だから、それぞれの志向やスキルを見極めながら、基本的にはその人の成長スピードで伸びていってもらうということが大切だと思っているんです。

とはいえ、ベンチャーが成長するためにはトップ自身の成長は不可欠だ。

堀江 : 小さな会社では創業社長は成長せざるを得ないですよ。社長自身が伸びない会社に先はない。会社が大きくなると人材の中味が薄くなるのではと考える人もいるかもしれないけれど、事実は逆ですね。大きくなるにつれて、優れた能力のある人が入ってくるようになる。今では、その分野で日本でもトップクラスというようなエンジニアが面接に来ますからね。

沈滞した組織と人材を活性化させる、ホリエモン流の秘策とは

組織のなかで働くエンジニアにとって、守りに入った大企業や、万年低位に甘んじる中小企業というのは、必ずしも楽しいものではない。新規事業や新技術開発のスピードがどうしても遅くなるし、技術で市場を席巻するという仕事の張り合いがないからだ。

大企業病におかされている会社があります。上司が現場をよく見ない。意味のない会議が多い。スタッフ部門の権限が強いなど。この会社の社長になったとしたら、まず最初に打つ手はなんですか」

という質問をしたのは、実際に大手企業でWeb系のシステムを開発するエンジニア。
堀江氏は、昨年買収した日本グローバル証券(現・ライブドア証券)を例に、沈滞した組織を活性化させる秘策を披露した。


堀江 : ライブドア証券の場合は、規模としては中小ですが、社員の平均年齢も40歳と比較的高く、買収前は人員リストラをしていて、全体的に後ろ向きな雰囲気が漂っていたように感がありました。僕がやったのは、そこに組織再建で実績のあるスタッフを社長として送り込んだだけなんです。でも、ガラッと変わりましたね。まず会社の名前を変えました。誰もが大手証券や外資系証券しかできないと思いこんでいた、引受業務や投資銀行業務を強化しました。他社から人を引き抜いて、プライベート・バンキング業務にも進出しました。「俺たちにもできるんだ」という自信が社員に広がったんだと思います。そうしたら顧客も新しいイメージを抱くようになった。従来の対面販売の業績までは伸びていったんです。

だから経営立て直しというのは、経費節減や社員の給料を下げるという後ろ向きの姿勢じゃだめ。組織をフラット化するというような小手先の改革でもだめなんです。そうではなく、プラスアルファの部分で新しいことをやれば、ちゃんと会社は変わっていくんです。大企業病に悩む企業の組織活性化策でも同じことがいえると思いますよ。

ホリエモンセミナーライブ再録(2) ライブドア堀江貴文社長にぶつけるエンジニアの悩み【技術スキル・キャリア編】 「経営のことを勉強するのなら、一度起業してみるのが絶対いい」
大胆な企業買収で巷の話題を独占している「ホリエモン」ことライブドア堀江貴文社長。もとはといえば、自分でコードも書いたプログラマが彼の原点。組織と人間関係やスキルアップに悩むエンジニアの問いにも真摯に答えてくれた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:05.04.20


転職・起業に失敗しても元に戻るだけ。命まで取られるわけじゃない
ホリエモンことライブドア堀江社長に、エンジニアが直接質問するセミナー「堀江貴文に聞きたいこと大募集!〜本音で語り合う、これからのキャリア〜」。いよいよ会場からの質問は、キャリアアップ、キャリアチェンジという、エンジニアにとってより本質的なものに突入していく。(進行はTech総研編集長・前川孝雄)


「バイオの研究開発をしていますが、技術を転換して、 全く異なる分野に移るように命令されました。 現在30歳ということもあって、それに応じたら自分の研究者としての価値を下げることになりかねないと心配です」

前川 : Tech総研の読者にとって、キャリアアップ、キャリアチェンジはとても重要なテーマです。 技術がどんどん変わっていく中で、新しい技術分野へ挑戦することは不可避ですし、技術の現場から管理職へとコース変更を余儀なくされる人もいるでしょう。

いま会場で「全く違う分野にいっても、今の自分のスキルを生かすことはできる」と答えた人が81人(約40%)いました。 キャリアチェンジに自信のある人が結構いるみたいですね。

堀江 : たしかに、違う分野にいくのはリスクでもありますよね。新しい技術をたえずキャッチアップすることはエンジニアとしては大切なことですが、逆に古い技術にこだわりをもつことで、希少価値が生まれるということもありますからね。どうしてもキャリアを変えたくなければ、自分で起業してみるというのはどうでしょうか。

「それも考えたことがあります。しかしこの分野での起業は初期投資が莫大にかかります」


堀江 : だったら最初は企業から請け負いの研究開発でしのぐというのも手ですよ。 ITベンチャーの中にも、研究資金を稼ぐために受託開発の仕事をしているところはたくさんあります。いま成功している企業の社長さんの中にも、企業当初は居酒屋でアルバイトして資金を稼いだという人もいます。

前川 : でも、企業の中にいるとなかなか外に飛び出る勇気がわかないものですね。

堀江 : うーん、でもたとえ失敗しても、ゼロになって元に戻るだけなんだから。命まで取られることはないんですよ。しかも、ここにいらっしゃる方は若いから、起業に失敗しても再就職すればいいんだし。ライブドアにもそういう経緯で入ってくる人は大勢います。失敗することは全然恥ずかしいことじゃない。むしろ一度自分でビジネスを始めたことのある人のほうが、 苦労がわかるから採用しやすいぐらい。

いま企業が求めているのは、マネジメントシップやアントレプレナーシップだから、 そういうスキルを磨くうえでも一度起業・転職することは意味があると思いますね。

自分のキャリアの方向は自分で決める。それを会社にも主張せよ

エンジニアとしてのキャリアへのこだわりがある一方で、技術とは別のスキルを身につけたいと考える人もいる。会場からはこんな質問も飛び出した。

「エンジニアから商品企画、事業企画、経営企画などの仕事に進むにはどうしたらいいか。将来は、より上流で会社の経営にかかわる仕事をしたいと思っている。技術者からそういう仕事に移るためのポイントがありますか」

堀江 : 一番いいのはやはり起業してみること。会社をつくるといやがおうでも全部自分でやらないといけないから、経営のスキルは絶対身につきます。大企業の人だったら、一度会社を出て小さな会社に移るのも、 経営を学ぶという点ではよいと思います。小さな会社だと何から何までやらないといけませんから。

逆に、大きな会社にいたままで、ほかの分野のスキルを磨くのはなかなか難しいでしょうね。会社は誰にでもそういうことをさせてくれるわけじゃないから。だからといって、MBA留学をするというのも、なんか付け焼き刃っぽい感じもするし。MBA取って戻ってきたからといって、すぐに経営企画部に移れるわけでもないでしょうからね。


前川 : ライブドアで実際に、技術から企画の方へ移りたいという希望が出てきたら、堀江さんはどうしますか?

堀江 : 僕ならやらせるかもしれない。でも、人によるかな。

前川 : 先ほどの方はエンジニアから別の分野へという質問でしたが、反対に技術の現場にいたいんだけど、 マネジメント業務をやらざるを得ない年齢、ポジションになってきて、どちらに進むべきか悩むという声もTech総研にはよく寄せられます。

堀江 : そればかりは、自分がやりたい方向で、主張を続けるしかないでしょうね。現場にずっといたいということであれば、その思いを上司にもちゃんと伝えるべきです。エンジニアがそういえば、会社だって折れざるをえないんじゃないですか。 僕も、部下からそういう要望を受けて、ずいぶん折れたことがありますよ。

陳腐化を恐れるな。コア技術をしっかりもっていけば、20年はそれでいける


技術の進化に自分は追いつけるだろうか、 今の技術はすぐに陳腐化してしまわないだろうかという不安は、エンジニアの間に根強くある。 会場で「エンジニアとして今の技術が古くなってしまうのが怖いか」と尋ねると、42人(約21%)の人が「Yes」と答えた。

しかし、技術の進化とそれに伴う現有技術の陳腐化について、堀江氏は案外楽観的な見方。IT業界の若手リーダーとしては意外とも思えるような答えが返ってきた。


堀江 : 技術スキルってそんなに簡単に陳腐化しないものですよ。 僕がコンピュータのプログラムを覚えたのは20年も前のことですけれど、そこでしっかり身につけたんで、それ以降、何か全く新しい技術を苦労して勉強したってことがないんです。


だからといって新しい技術についていけないということではないですよ。コンピュータ・プログラムの基本的な考え方なんてそう変わらないものだということ。 Javaが出てきたときもすぐに覚えられましたから。新しい言語といっても、共通点のほうが相違点よりも多いと思うんです。ですから、コンピュータの世界でも、コアの技術のスキルというのはそう短期間では変わらない。それに甘んじるということではなくて、そこは自信をもってより深くスキルを磨いていくということでいいんじゃないかと思います。

この続きは4/27(水)に公開します。」
http://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03500.jsp?p=lwk024&f=hotwired&__m=1
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■本当に堀江氏の発言はポスト・モダン的です

不連続的差異論が、一見、無秩序に書き綴られた多くのポスト・モダンの見解を、すっきりと、単純化して提示できたように、また、提示することで、新しい社会の形成に方向性を明示できるように、堀江氏の発言は、とても、不連続的差異論の方向性と合致しています。我々の議論を読んでいるのでは、と思ったりするくらいです。この面において、或る一定の層においては、ポスト・モダンの思想が、日本にも定着しつつあると思われれます。
ODA ウォッチャーズ (2005-04-20 08:35:58)

ホリエモンと不連続的差異論

いわゆる、ポストモダンポスト構造主義が、流行として、知識人他にもてはやされた時期、またその後、見捨てられた時期は、バブル時代とポストバブル時代にそれぞれ重なりそうです。結局、ポストモダンの問題が、真の理論/現実的問題として考えられたのではなくて、上っ面で、あるいは生半可に捉えられていたのだと思います。私自身、不連続性という核になる視点がなければ、ポストモダン理論は、漠然としていたままであり、連続性と不連続性の間で揺れ動いていたことでしょう。結局、この問題は、いわば本当の、真の、つまり、あらゆる領域、分野に関わる問題であり、理論と現実両方が、直面していた/いる問題だと思います。不連続的差異論は、この問題の理論的正解であり、現実としては、ホリエモンの直観ないし天才的な経営的資質によって開拓されつつあるのだと思います。ホリエモンへの中傷、貶め、侮辱等々たくさんありますが、彼は新時代の試金石です。彼は、直観的にないし身体でポストモダンの経営を行っているのだと思います。彼は、自己の行っていることを、簡単に「お金儲け」と言っていますが、それは、少し違うでしょう。やはり、不連続的差異論的に社会的他者的経済を指向しています。彼のインタビューを引用します。

堀江:究極的に言うと、私は自分が楽しく生きたいんですね。世間的な、俗な意味でいえば、金にも権力にも名誉にも実は全然興味がない。だって、もうすべて手に入れちゃったから。これ以上何があるんだ、というくらい。
私個人がこれ以上お金を持ってもしょうがないんです。お金を使うのって大変ですよ。面倒くさいんです。人にはたかられるし(笑)。自分が満足に生きるためには、自分だけが得して王様みたいになっても意味がない。人間というのは関係性のなかでしか生きられない動物ですから、やっぱり世の中が良くなって、周りの人たちも幸せになってくれないと嫌なんですよ。社会の景気も良くなってくれないと困る。みんなが幸せに生きられる社会の仕組みを作るために何をしたらいいのかを、毎日、頭が痛くなるほど考えているんです。考えてるけど、結局それは自分が楽しくやりたいから。べつに奉仕なんかしたくはありません。」『平成ホリエモン事件インタビュー 牙を抜かれた経営者は去れ:日本の経営者は、経営なんて遣ってないんです』(文藝春秋 2005年5月号 
p.124)
ディスクリート・ディファランス (2005-04-21 03:29:25)

■堀江氏の「お金儲け」の意図

出張中で、直ぐに見れませんでした。
この『自己の行っていることを、簡単に「お金儲け」と言っています』については、私も気になって、考えていました。私が思うには、彼自身、人間の活動は、多くの次元、不連続的な世界の中にあって、その内の一つが経済活動であると割り切っているので、経済活動、特に、金融市場において、「金儲け」と言うテーマこそ、正当であり、「金融市場の差異性を述べれば、当然、「お金儲け」」であり、彼自身、この不連続性を強調せざるを得ないと思われます。彼自身、自己の世界観、非常に不連続的差異論的な世界観を主張したい衝動に突き動かされている、ように思われます。例えば、服装なども。また、私は、「寄付・募金・補助」などを、人間の平等に対する冒涜だと思っています。これらこそ、支配の源泉であり、手段です。中学まで、私は、募金少年でしたが、いろいろな経験から、それを学びました。
ODA ウォッチャーズ (2005-04-22 08:57:34)

ホリエモンの「お金儲け」について

おっしゃる通りだと思います。経済の領域において、新保守主義のように、道徳を言ったら最低・最悪です。ホリエモンはこの点で、きわめて明敏・鋭敏だと思います。お金儲けということが、正論だと思います。資本主義の論理に忠実であり、優等生です。この点で異論はありません。彼は、資本主義のもっている潜在性(正に、差異的デュナミスです)を進展させようとしていると思います。しかし、実質は、「お金儲け」ではないと思います。差異としての資本主義を彼は進展させていると思います。そう、ここで初期マルクスを想起してもいいと思います。正確に言うならば、「お金儲け」であると同時に差異的資本経済の展開を彼は指向しているということだと思います。差異的資本経済とは、差異/他者的経済であり、ここが、インタビューでの彼の関係性経済の発言になると思います。この他者的関係性が資本主義にとり、本当の核心であることを彼はわかっているのだと思います。これは、スピノザ的でもあり、本当に天才的な経営知だと思います。差異/他者共保存的経済論です。不連続的差異的経済学です。
ソフィオロジスト (2005-04-22 14:25:41)