現象化への力学:物質的/性的個体の生成

現象化への力学再論

イデア界の不連続的差異/虚度の90度回転によって、メディア界が生成する。これは、差異の疑似連続化である。あるいは、正確には、差異がゆらぐ状態である。そして、私見では、メディア界からさらに90度回転して、現象界が発現する。これが、マイナス強度である。そして、差異回転は続き、270度回転で、再度メディア界を形成する。しかし、ここでは、方向は逆になっている。すなわち、最初のメディア界では、イデア界から現象界への往路であったが、再度のメディア界では、現象界からイデア界への復路である。そして、一回転して、イデア界に再帰する。しかし、当然、これはらせん的回帰である。
 以上のように、不連続的差異論を確認して、ジェンダー論を考えよう。私はこれまで、女性の強度がプラスで、男性のはマイナスだと述べてきた。これはどのように把捉すべきか。これは、女性の差異が、メディア界的であり、男性の差異が現象界的だと換言できるかもしれない。しかし、遺伝子的にどうなのだろうか。つまり、差異遺伝子的にはどうなのだろうか。以前、わたしは、メディア界にはイデア極ないしイデア面と現象極ないし現象面があると言った。これをここで活用すると、このメディア界における極性分化がジェンダー分化に発現しているのではないだろうか。すなわち、プラス強度(イデア極)化とマイナス強度(現象極)化である。ここで、先に触れた星辰(不連続的)遺伝子と継続(連続的)遺伝子の区別を適用すべきだろう。前者は特異・コギト的であるとしよう。そして、後者において、肉体的ジェンダーの区別が生じると考えられる。すなわち、継続遺伝子において、女性はプラス強度をもち、男性はマイナス強度をもつというように考えたい。つまり、物質的身体として、雌はプラス強度をもち、雄はマイナス強度をもつ構造ないしシステムとなっているということである。つまり、雌はメディア界性を帯び、雄は現象界性を帯びるということである。とりあえず、このように作業仮説しておき、検討を続けよう。(以上が継続遺伝子であるが、星辰遺伝子の場合は、不連続的差異が言わば、むき出しである。)
 ここで、個体形成の問題に入らないといけない。それは、差異の現象化であるから、当然、マイナス強度化である。つまり、継続遺伝子による物質的固体化とは、マイナス強度をもつということである。そして、ジェンダー遺伝子を仮定するなら、雌雄はそれぞれプラス強度性とマイナス強度性を帯びるということになる。ここで、ジェンダーという用語を用いると混乱する恐れがあるので、性別遺伝子ないし性差異(性異)遺伝子あるいは単純に性遺伝子と呼ぼう。性遺伝子は、マイナス強度の個体性において物質身体のメディア界を規定・規制するのではないだろうか。だから、雌性遺伝子は、マイナス強度の物質個体ないし物質身体においても、メディア界においてプラス強度をもち、雄性遺伝子はメディア界においてマイナス強度をもつと考えられる。換言すれば、前者はイデア極性、後者は現象極性を帯びるということである。